空売りでしかできないこと
プロトレーダーへの近道となる「勧め」シリーズも第3段となり、いよいよ最終回です。
そしてラストを飾る今回のテーマは「空売り」です。
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今回は第1弾や第2弾のように便利ツールは用意しておりませんが、こちらもプロのトレーダーになるためには重要な要素となりますので、是非とも最後までお付き合いください。
信用取引とは?
みなさんは株式トレードにおいて、「信用取引」をしていますでしょうか?
おそらくこのサイトを訪れる方の多くは「やっていない」と回答されると思いますが、その原因は信用取引に対する良くないイメージのせいではないしょうか?
一般的には「危険」や「借金」、「退場」などと言った言葉が連想されがちで、素人のトレーダーはそれに見合うメリットを見出すことができず、証券会社との契約には至らないのだと思います。
確かに信用取引には「リスク」がありますし、証券会社からお金や証券を「借りる」ことになるわけですから、場合によっては「退場」という憂き目に追い込まれる可能性だって否定できません。
ですがデメリットとメリットは表裏一体です。デメリットがあると言うことは、当然それ相応のメリットもあるのです。そしてそのメリットの代表とも呼べるものが「空売り」なのです。
「空売り」は、証券会社から株を借りて売り払い、株価が下がったところで株を買い戻せば、その差額分が利益になるという取引方法です。
上げ相場でしか利益を得ることのできない「現物取引」に比べ、「空売り」は下げ相場でも利益を獲得することができるため、合わせて使用すればどんな局面でも利益を獲得することができるようになります。
もちろんそれだけではありません。「空売り」はリスク回避にも使用することができるため、うまく使い熟せばトレードの幅も格段に広がります。
次の一手は?
例えばすでに利益の出ている「買い」のポジションを持っている際に、次の図(図1)のような局面に差し掛かったとします。
次の展開が読めないチャート
移動平均線としては上昇基調なのですが、現在の株価は下げ気味であり、もしかすると大きな転換期に差し掛かっているかもしれないという状況で、みなさんはどうされますでしょうか?
取り合えず利益を確定して避難をしておきべきなのか、それとも更なる上昇を狙って保持を継続するべきなのか、このどちらかで悩まれるとは思いますが、もしここで「空売り」が使用できるのであれば、それらとは全く違った選択肢として、リスク回避の手法が選べるのです。
リスク回避の手法
やり方は至って簡単で、いま所持している「買い」ポジションと同数分の「売り」ポジションを取得するだけです。(図2)
空売りの図
この方法を使用すれば、株価が「上昇」や「下降」のどちらに傾いたとしても、リスクを回避することができます。
まずは株価が上昇した場合を見てみましょう。(図3)
上昇したと想定した図
株価が上がれば「空売り」した分は損失となりますので、ここで全ての空売りを買戻し、「損切り」を実施します。
「損切りをしてしまったら意味がない」と思われるかもしれませんが、この相場はもともと上昇基調であったため、それがもみ合いの末に上げに転じたのであれば、上げに働く力は強く、上昇は暫く継続すると考えられます。
ですので残した「買い」のポジションで、損切りした分以上の利益が獲得できるです。
次は株価が下がった場合を見てみましょう。(図4)
下降したと想定した図
株価が下がって「買い」で発生していた利益が減ってしまっても、「空売り」で損失額と同額の利益が発生するため、例えここで大暴落が発生したとしても、「空売り」を入れた時点の利益は担保されることになります。
ですのでこのまま「売り」と「買い」のポジションを両方とも決済してもいいですし、更に下げる兆候があるようであれば、「買い」ポジションのみを決済し、「空売り」を保持し続けても構いません。
この様に、「空売り」を上手く活用すればトレードを有利に進めることができるのです。
他にもあるメリット
でもこのリスク回避の方法は資金面において、現実的ではないと感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
何しろこの「空売り」を実施するためには、すでに含み益が出ている「買い」ポジションと同額の余力がないとできない手法となるのですから。
ですがご安心ください、「信用取引」の契約を結ぶと「レバレッジ」も同時に使用できるようになります。
これは「信用取引」におけるメリットの一つで、自己資本を元本として資金調達を行うことによって、取引金額を引き上げることのできるサービスなのです。
その倍率は証券会社によって多少違いますが、おおよそ自己資金の3倍までの取引が可能となりますので、「空売り」にはこの資金を充てればいいのです。
信用取引における注意点
ただし「レバレッジ」の使用には注意点があります。
3倍の額を全てトレードに使用すればその分利益も大きくなりますが、もしそれがマイナスに作用してしまうと資金不足となる「追証」が発生し、証券会社から追加の資金投入を求められてしまいます。
ですので、慣れないうちは資金分のみをトレードで使用し、今回のように「空売り」が必要な場面でのみ「レバレッジ」を使用するようにしてください。
それと「空売り」に関しても注意点があります。
1日のトレードで51単元(1単元が100株とした場合、5100株がそれにあたる)以上の「空売り」は金融商品取引法施行令によって規制されていますので、どうしても51単元以上の「空売り」を実施しなければならない局面に遭遇したら、日を跨いで分割でトレードするようにしてください。
そうすれば51単元以上の「空売り」を所持しても、特に問題になることはありません。
まあ色々注意点もあり厄介に感じるかもしれませんが、やはりプロのトレーダーを目指すのであれば不可欠な要素となりますので、是非とも「信用取引」を開始してみて下さい。
もちろんプロの中には「信用取引」を使用しない方もおり、おそらく日本で一番有名なトレーダーのBNF氏なんかは、現物取引のみで数百億の利益を稼ぎ出したそうですが、それはもう神業の領域であり、一般人が目指せる技術ではありませんので、みなさんは堅実な方法でプロトレーダーを目指して下さい。